とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
 繰り返す日々。
 聖女の暗殺未遂。
 婚約破棄。
 処刑。

 四回目、五回目……私の結末はいつも同じ。
 どれだけ抗おうとも、必ず聖女を殺そうとした罪により、私は処刑された。

 六回目。目覚めた私は、自らの手で自分の命を絶った。
 
 でも無駄だった。
 絶命したはずの私は、無傷の状態で再びベッドの上で目を覚ました。

 七回目。私は国外へと逃げ出した。けれど野盗に遭遇し、無慈悲な彼らに殺されてしまった。

 逃げる事も出来ない。

 八回目、九回目。何も変わらない。
 

 まるで悪役令嬢みたいね。

 十回目。目覚めた私は、今の自分を、よくある恋愛小説の登場人物に重ねていた。

 悪役令嬢。ヒロインのライバル役であり、読者からの嫌われ役。
 物語のクライマックスで、悪役令嬢はそれまでのヒロインに対する悪行を白日の下に晒され、断罪される。
 それが定番の展開で、読者が一番楽しみにするシーンの一つ。

 私が悪役令嬢だとしたら、一体何がいけなかったの?
 嫌がらせを受ける彼女を「ざまあみろ」と笑っていた事?
 神様に「彼女がいなくなりますように」とお願いした事? 
 それが、何回も死ななければならない程、罪な事だったというの?

 ただ……私は、誰かに愛されたかっただけ。
 私を命がけで産んだ母親は亡くなり、父親からの愛情も与えられる事がなかった私を、愛してくれる人がほしかった。
 聖女の様に、多くの人からの愛なんて望まない。
 たった一人の人に愛されるだけで良かったのに。
 その一つだけの愛情を求める事も、許されないの?


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