政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
捨てられない夢
今日、私はこの人の妻になる。
「恵茉」
夫となる涼成さんに初めて抱きしめられ、鼓動が全身に音を響かせる中でなんだろうと首を傾げた。すると私の後頭部を手で固定した彼がゆっくりと顔を近づける。
あ、キスされる……。
目を瞑った私に触れるだけのキスをして柔らかな唇はすぐに離れた。こちらの反応を確認しているのか、射抜くような目つきは熱っぽく、彼の魅力に囚われて拍動がより強くなる。
それからもう一度唇を重ねにきて今度はねっとりと押しつけた。一度目のキスより彼を色濃く感じて思わず広い背中に手を回す。
角度を変え離れてはくっつくキスは気持ちよく、だんだん緊張や羞恥が溶けていく。
息が上がって熱い吐息をこぼした時、唇の割れ目を舌で舐められて背中がゾクッとした。
涼成さんの舌も吐息も温かくて気持ちがいい。このままずっと触れていたい。
そう思っていたのに熱が遠ざかり、名残惜しくて目の前の綺麗な顔を見つめる。
「口開けられるか?」
とても優しい声だった。唇を舐められていた意味を理解して、全身が燃えるように熱くなる。
そっか……口を開かなければ舌を入れられない。
夫婦の初めてのスキンシップなのに上手くできない自分を情けなく思う。
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