政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
気品がある人だな……。
細身だけれど肩幅が広く、百五十七センチの私は彼の背中にすっぽり隠れてしまう。少なからず注目を浴びた今の私にとってそれはありがたいことだった。
久我さんは空いている方の手でスーツのポケットからスマートフォンを取り出してどこかに電話をかける。
盗み聞きしてはいけないと思いつつ、自然と耳に入ってくる言葉はどうやら私への対応についてのようで。
連れられるがままホテルの一室に案内され、恐縮しながら入室するとすぐにひとりの女性が入ってきた。
二十代後半くらいに見受けられる彼女の両手には大きな紙袋があり、これからいったいなにが始まるのかと冷や汗がじわりと肌に滲む。
女性と一言二言会話をした久我さんが私へ向き直った。
「なにかありましたらご連絡ください。先ほどの男性の件についても、最大限にご協力させていただきます」
差し出された名刺を両手で受け取って久我さんを見上げる。私を労るような、慈愛を感じさせる微笑みに胸がギュッと締めつけられて息を呑む。
この人、すごく優しい顔で笑う。
「ありがとうございます」
胸がいっぱいでお礼を伝えることしかできなかった。
細身だけれど肩幅が広く、百五十七センチの私は彼の背中にすっぽり隠れてしまう。少なからず注目を浴びた今の私にとってそれはありがたいことだった。
久我さんは空いている方の手でスーツのポケットからスマートフォンを取り出してどこかに電話をかける。
盗み聞きしてはいけないと思いつつ、自然と耳に入ってくる言葉はどうやら私への対応についてのようで。
連れられるがままホテルの一室に案内され、恐縮しながら入室するとすぐにひとりの女性が入ってきた。
二十代後半くらいに見受けられる彼女の両手には大きな紙袋があり、これからいったいなにが始まるのかと冷や汗がじわりと肌に滲む。
女性と一言二言会話をした久我さんが私へ向き直った。
「なにかありましたらご連絡ください。先ほどの男性の件についても、最大限にご協力させていただきます」
差し出された名刺を両手で受け取って久我さんを見上げる。私を労るような、慈愛を感じさせる微笑みに胸がギュッと締めつけられて息を呑む。
この人、すごく優しい顔で笑う。
「ありがとうございます」
胸がいっぱいでお礼を伝えることしかできなかった。