政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 気を強く持とうとしても、胸に刺さった数々の言葉が邪魔をしてどうにもならなかった。

 カップを再びソーサーに戻し、顔が上げられないまま情けないくらい小さな声を出した。

「お話はわかりました。ただやはり、私から申し上げることはなさそうです。このあとの予定がありますので、お先に失礼させていただきます」

 財布からお札を一枚取り出してテーブルの上に置き、席から立ち上がった。

 ちらりと坪井さんを盗み見ると、私を見上げる瞳の奥に強い憎悪が燃えている。派手な顔立ちも手伝ってその迫力は凄まじく、うなじの辺りがゾクッとして足早に席から離れた。
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