政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています

 心ここにあらずで、なにも手につかない。せっかく今晩はご馳走にしようと思っていたのに難しそうだ。

 献立を簡単なものに変更して下準備をしたあと、どうしてもお母さんと話がしたくて実家に向かった。

 お母さんはちょうど昼食を食べ終えたところで、家の中でひとり、ソファで趣味の裁縫をしている最中だった。

 うちには家政婦さんがいるのだが、家事を済ませて昼過ぎに帰宅する。

 涼成さんが他人を部屋に入れることに抵抗があるのと似たようなもので、家政婦という存在に慣れていない景雪さんにその気配を感じさせないよう気遣ってのことだ。

 他人を部屋に招き入れる、か。あのマンションに私以外の若い女性が出入りしていたなんて考えもしなかった。
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