政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「連絡もなしにどうしたの?」

 引っ越してから一度も寄りつかなかった娘が突然やってきたら、そりゃあ不審がるよね。

「聞きたいことがあって。ちょっと飲み物もらうね」

「あ、お母さんのもお願いできる?」

「はーい」

 リビングの冷蔵庫にあったルイボスティーをグラスに入れ、テーブルに置いてからお母さんの横に腰を下ろす。

 お母さんは老眼が始まっているらしく、眼鏡を外してからテーブルに最初から置いてあった菓子折りに手を伸ばした。

 箱を開けると美味しそうな焼き菓子が並んでいる。

「恵茉ちゃんもよかったら食べて。お友達にいただいたのだけど、景雪さんは甘いもの好きじゃないし全然減らないの」

 初秋だというのにまったく日焼けをしていないお母さんの肌は真っ白だ。私と同じタヌキ顔で、実際の年齢よりかなり若く見える。

 お昼ご飯を食べていないにもかかわらず、ストレスを受けたせいか食欲がない。でも甘いものが大好きな私がここでお菓子を口にしなければ、ますます何事かと心配される。

 フィナンシェを掴んでひと口食べてから、単刀直入に聞きたかった質問を投げかけた。
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