政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「土地についてだけど、売ってほしいと打診を受けていたのは結構な数だよね?」

 基本的にそういった交渉はお母さんと景雪さんに任せていた。

「そうね」

 土地の今後についてはすでに決定したので、どうして今さらこの話を持ち出したのだろう?という不思議そうな顔をしている。

「私が涼成さんを紹介する前に、久我不動産から連絡はなかったの?」

「あー……」

 視線を遠くに投げたまま瞬きを繰り返すだけでなかなか返答がない。

「その反応は打診があったんだね」

 お母さんは困り顔を作って、ふたつ目の焼き菓子に手を伸ばしながら愛想笑いをした。

「どうして黙っていたの? 涼成さんと会った時も、初めましてってお互いに挨拶していたじゃない」

「連絡をもらったのはメールだから、お会いしたのは初めてだったの」

 なるほど、そこに偽りはないのね。
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