政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
　なにが原因かわからない。俺が恵茉に避けられる原因を知らずうちに作ったのか？

　自然と関係が修復すればいいのだが、そうでないのならそろそろ恵茉の本音を聞かないと溝が深まるばかりだ。俺に至らない点があるのなら改善したい。

　鬱々とした気分を振り切ってリビングへ戻ると、恵茉はダイニングテーブルの椅子に腰掛けてぼんやりしていた。

　テレビをつけるわけでも、スマートフォンをいじるわけでもない。こういう姿はここ最近よく目にする。

　恵茉の正面に腰掛けてコーヒーカップを手にした。

「ありがとう」

　微笑むと、恵茉も笑い返してくれる。

　避けられている以外はいつも通りなんだよな……。

「今日はリクエストにお応えして、唐揚げ弁当にしたよ」

　言われて、ふと鼻を掠める揚げ物の匂いに動きを止めた。

「もしかして朝から揚げたのか？」

「その方が美味しいからね」

「何時に起きたんだ？」

「んー？　あ、油の処理するの忘れてた」

　質問には答えず立ち上がり、急いでキッチンへ入っていく姿を複雑な胸中で眺める。
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