政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「今夜は予定通り会食があるけどなるべく早く帰る。なにかあったら電話してほしい。必ず出るから」

「うん、わかった」

 恵茉の様子が変化した前後でなにがあったかと考えたが、思い浮かぶのは電話に出られなかったことのみ。

 仕事をしているとわかったうえで俺に電話してきたのは初めてだった。あとからかけ直したが、『聞きたいことがあったんだけど、もう解決したから大丈夫』と言われ。

 立て込んでいて深く考えずにさらりと流したが、あの時しっかりと対応していたらなにか違っていたのだろうか。

「夜、恵茉が起きていたら話がしたい」

「話? 結婚式についてとか?」

「そういうのではない」

「……なるべく起きているようにするね」

 なにかを察したのかそうでないのかは定かではないが、口調からは僅かに動揺が見られた。

 俺たちの間に話し合いが必要なのは恵茉が一番わかっている。

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