政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「どこまで私を馬鹿にすれば気が済むんですか?」

 不機嫌そのものの声は棘を含んでおり、激しい怒りが滲んでいる。

「私が社長を好きっていう気持ちは、口にしていなくても伝わっていましたよね?」

 とうとう開き直った坪井は明け透けにものを言う。

「社長が恵茉さんの土地をどれだけほしがっていたかは知っています。だから恵茉さんと結婚したのも、もちろん嫌ですけど、仕方ないと割り切ります」

 なんだろう、この一方通行のやり取りは。感情論で話しているせいか俺の気持ちを無視して会話を進めている。

 彼女の言い分が頭に入ってこず、ちっとも共感できない。

「好きでもない女性と結婚までした社長が可哀想で……」

 なにを言い出すのかと呆気に取られる。

 酔っているからなのか? それともこれが坪井の本質なのか?
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