政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「私、社長を慰めてあげたいです。社長はどうですか? 私を抱きたいと思いません?」

「いや、まったく」

 長々とやり取りを引き延ばされてうんざりしていたのもあり、遠慮なくばっさり切り捨てた。

 俺の返答がよほど意外だったのか、坪井は元々大きな目をまん丸にしてポカンとする。

「えっ……?」

「俺がなにか誤解をさせる振る舞いをしていたのなら謝る」

 もちろんそんな真似は一切していない。だが脈ありだと感じていたらしい坪井の反応を見て、やはり俺にも責任があったのだと自らをかえりみる。

「俺は妻を愛しているんだ。坪井の気持ちは受け入れられない」

「愛している? 恵茉さんを?」

「ああ」

「そんな嘘つかなくていいんですよ。私はなにもかも知っていますし」

 やだなぁ、と坪井は肩を揺らして笑った。

 知っているというけれど、恵茉と交わした契約について坪井に一切話していない。ただの彼女の妄想だ。
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