政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています

「もうホームセンターも閉まってるよね。うちになら猫用ミルクもあるけど、お酒飲んじゃったから車が出せなくて」

　飲まなければよかったと後悔していると朔はカラッとした明るい声で言う。

『それなら俺が取りに行ってもいい？』

「いいけどもうすぐ九時だよ？　おじさんに車出してもらえそう？」

　たしか叔母さんは普通自動車免許を持っていなかったはず。

『父さんも飲んでる。だから俺が自転車で行くよ。そんなに遠くなかったよね？』

「ええっ。危ないよ」

『恵茉ちゃん、俺もうそんなに子供じゃないよ』

　クスクスとおかしそうに笑われて肩をすくめる。

『じゃあ取りに行くね。アプリで位置情報送っておいて』

　朔は軽快に言って通話を切った。

　心配だけど、来るって言っているのだから待つしかない。

　酔い覚ましにコップ一杯の水を飲んでから、パジャマからティーシャツとスキニーデニムに着替え、必要なものを紙袋に詰め込んだ。