政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「でも君の固い信念には強く惹かれた。応援したいと思う。運用は俺がするけど土地の所有権はそのままでかまわないし、なにより夫婦になるのだからその辺りの不安は解消されるだろう。もちろん君に決まった相手がいなければの話だけど」

 久我さんは手を解きワイングラスを持って口に運ぶ。しなやかな所作をぼんやりと眺めながら脳内でぐるぐる回る思考を整理する。

 どういうつもりでこんな提案をしてきたのか謎だが、悪い話ではない。むしろ私にとっては都合のいいことしかないのでは?

 千石さんが提示してきた買い取り額は他社と比べたらかなり高かったが、そこに付け込んで愛人契約を提案してきた。

 しかし久我さんの場合は土地を手放さなくていいうえに、動物保護施設の建設計画を手伝ってくれる。そして彼と運命共同体となる契約、いわば政略結婚だ。

「私にはメリットしかないお話ですけど、久我さんにとってはどうなんでしょうか?」

「俺との結婚を価値あるものと捉えてくれてうれしいよ」

 愉しげに笑った顔もカッコいい。釣り合いの取れない私と結婚しようとする動機がやはり気がかりだ。
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