政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「あの広大な土地をどう運用していくのか、考えるだけでワクワクするよ」

「え、それだけですか?」

 短絡的と思える返事に、呆気に取られる。

 仕事が好きすぎる人なだけで裏はない? いや、でも……。

「私は愛人とか受け入れられないんですけど、それについてはどうお考えですか?」

「愛人じゃなくて妻なんだけど……ああ、もしかして、俺が浮気をするとでも言いたいのか?」

 真顔でこくりと頷くと、久我さんは「はあ」と大きな溜め息をついた。

「浮気なんてするわけないだろう」

 その返事を聞いて鼓動が速くなる。

「お付き合いされている女性はひとりもいないんですか?」

「いたら君に結婚を申し込まない。これでも三十二年間、誠実に生きてきたつもりだよ」

 まいったな、と苦笑する顔は弱りきっていて、そんな表情もするのかと目を見張る。

 お金を持っていてカッコいいから、女性関係は派手だろうという偏見を持っていた自分を恥じる。

「失礼な質問でしたね。すみません」

「かまわないよ。数時間前に愛人になってほしいと打診された君にとっては、必要な確認作業だったよな」

 一応プロポーズをされたことになるのだろうけれど、実感がほんの少しも湧かない。
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