政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「仮面夫婦は嫌なんです。円満な夫婦関係を築きたいので」

「それはもちろん」

 にこやかに相槌を打つ久我さんの口からは、結婚してからの距離感について言及する様子はなさそう。

 私から聞かないとダメか……。

「例えばですけど、私が久我さんを本気で好きになっても受け止めてくれますか?」

 一気に言い切ってから大きな深呼吸をして目線を手元に落とす。

 なんて言うかな。

 これ以上拍動が強くなったら心臓が壊れてしまいそう。

「好きになってもらえないと困るし、俺も好きになるために君に歩み寄りたい。答えになったか?」

 優しく諭すような口調だった。目を合わせると久我さんはにこりとする。
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