政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 ひと息ついてから4LDKの部屋をすべて回り、恵茉の部屋が綺麗に片付けられているのを確認してからリビングに戻った。

「このあと役所に婚姻届けを提出したとして……それでもまだ時間があるな。どこかに出かけるか?」

 ソファに腰掛け、恵茉もおいで、という意味を含ませて隣をトントンと叩く。恵茉は遠慮がちに座って身体を俺の方に向けた。

「私は大丈夫だけど、涼成さんは仕事があるんじゃないの?」

 さっきまでパソコンと向き合っていたのを気にしているようだ。

「今すぐにやらなければいけないものではないから」

「そっか。じゃあ……どこに行く?」

「ペットショップで、犬と猫用のケージを買いに行くというのはどうだ」

 恵茉は目を丸くして呆ける。

「え? なんで?」

「今後保護した犬や猫を迎えるために準備しないといけないだろう。恵茉の家にあるものを移動させてもいいけど、なにかあった時のために、実家とマンションの両方にケージがあった方がいいと思う」

 写真を見せてもらった茶トラの猫は無事に新しい家族が決まって、現在柳沢家に保護している動物はいない。

 神様が俺たちをさっさと結婚させようとしているかのように、いろいろなことがタイミングよく進んでいる。
< 40 / 137 >

この作品をシェア

pagetop