政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「新鮮だから見ていたい」

 背後から近寄ってお腹に手を回し、首筋に顔を埋めると恵茉は声にならない悲鳴を上げて肩を激しく揺らした。

「ちょっと! 危ないよ!」

「たしかに危ないな」

 顔を真っ赤にして狼狽える態度に満足したのでおとなしく引き下がった。

「向こうで仕事を片付けながら待っているよ」

「そうしていてくださいっ」

 何故か敬語になった語尾はちょっと怒っているようにも聞こえ、こういう反応がツボでちょっかいを出したくなるんだよなぁと頬が緩んだ。

 しばらくしてダイニングテーブルに家庭的な料理が並んだ。

 祖母と母親以外の手料理を食べたのが初めてでそれだけ新鮮だったのだが、恵茉の作った料理はどれも美味しくて、「これなら毎日食べたい」と言った言葉をまた拾い上げた恵茉は、朝晩の食事を用意すると微笑んでくれた。

 なんでも食欲のない動物に手作りフードを作っているうちに、人間の料理も作るようになったとか。順番が逆なような気がするけれど、それも恵茉らしくて微笑ましい気持ちになった。
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