政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 涼成さんはシーツの上に組み敷いた私をじっと見下ろす。

「今夜はずっと恵茉に触れていたい」

 ずっとって、言葉通りの意味じゃないよね? 抱きしめ合いながら眠るとかそういうことだ、きっと。でもその前に問題がひとつ……。

「私もそうしたいけど、あの……初めてだから、上手くできないと思う」

 さっきから雰囲気を壊してばかりで申し訳ない。

 涼成さんの瞳が大きく見開かれる。

「初めてなのか? 交際経験があると言っていたよな」

「高校生の頃の話だよ。手を繋いでキスはしたけど、それだけ」

「この状況でそんなことを言うなんて、なかなか酷なことをしてくれるな」

「それはどういう意味……?」

 涼成さんは眉尻を下げて困ったような笑みを浮かべた。

「抱き潰すつもりでいたけど、初めてで俺の体力に付き合わせるわけにはいかないだろう」

 ひと晩で何回もするってこと? そんなの可能なの? わからないけれど……。

「体力はある方だし、大丈夫じゃないかなぁ?」

 気を遣ってほしくなくての発言だったが、涼成さんはなぜか眉間に皺を寄せた。
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