政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「涼成さん……」

 キスの合間に「なに?」と言うので、襟元をくいっと引っ張った。

「……これ、脱いでほしい」

 脱いでくれたらお互いださまだし羞恥心が和らぐかもしれない。

 涼成さんは舌に強く吸いついてから顔を離して、ふう、と小さく息をついた。唇が濡れていて色っぽく、見惚れてしまう。

「そんなこと言って、そんなふうに見つめて、今度こそ容赦しないけど」

 言葉の意味を考えるより先にバスローブを脱いだ涼成さんが、頬や目元、それから耳へ激しいキスの雨を降らす。

 くすぐったいのと気持ちいいのとでぶるっと身震いする。なにげなく視線を上から下にずらすと、予想以上に厚い胸板と、綺麗に割れた腹筋を目にして慌てて顔を逸らす。

 急に身じろいだせいか、ぴたっと動きを止めた涼成さんが一拍置いてまた顔を埋めた。

 胸の膨らみや足の割れ目にまで及んだ刺激に翻弄されて、もうなにがなんだかわからなくなる。

 自分の意思とは関係なく瞳が潤み、目尻に涙が滲んだ。

「痛いか?」

 些細な変化も見逃さない涼成さんは心配そうに私の顔を覗き込む。
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