政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 様々な想いが脳裏を駆け巡ったのはほんの一瞬だったと思う。坪井さんに気づかれないように深呼吸をして心を落ち着かせた。

 なんにせよ、これは私が判断していい問題ではない。

「それでしたら一度、涼成さんに確認を取らせていただいてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです」

 怯む様子がないことから、彼女の発言に信憑性が出てきて内心かなり動揺した。

 すぐさま電話をかけてみたが応答はない。諦めてスマートフォンを耳からどけると、坪井さんが顎に手をあてて首を捻った。

「会議中かもしれませんね」

 秘書なのだから彼のスケジュールを把握しているはず。あえて電話に出られない時間を狙ってきたとしたら……。ううん、さすがにそれは変に疑いすぎだよね。
< 94 / 137 >

この作品をシェア

pagetop