私の嘘と彼女の真実
ふふっと小さく笑った和史は会ったときとは違い、少し明るい顔になっていた。
その笑顔に胸の奥がきゅっと切なく締まった気がしたが、気のせいだと季実枝は片付けた。



その日も、季実枝は和史と会っていた。
頻繁にふたりで飲んでいるが、友子は会社の人と飲んで帰ると説明されて信じているらしい。
最初はそれに若干の罪悪感があったが、今では和史が気の毒でまったくなくなっていた。

「いまだにさ、電気消してくれって言われるんだよ……」

今日も和史の口からどどめ色のため息が落ちていく。
親友の夫婦生活を、しかも本人がいないところで聞くのはあれだが、どうも今日の悩みはそこらしいので黙って聞いた。

「しかもさ、『気持ちいい?』って聞いても、なにも言ってくんないし。
『気持ちいいなら気持ちいいって言ってよ』って言ったら、『そんな恥ずかしいこと言わせるなんて酷い』って泣かれるんだぜ?
勘弁してくれ……」

「あー……」

確かに友子はそういうウブなところがある。
しかし、結婚してもう三ヶ月。
しかもその前に半年も付き合っている。
それだけあっていまだにそんな態度を取られたら、普通の男なら嫌になるだろう。
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