私の嘘と彼女の真実
「なら。
……季実枝、抱かせてくれない?」

「へ?」

和史から小さく拝まれ、変な声が出る。
今、抱かせてくれと言われた気がするが、気のせいだろうか。

「季実枝を抱かせてくれ。
それで、俺はまだまだ大丈夫だって、自信を取り戻させてくれ」

「へ?」

さらに和史から頭を下げられ、また変な声が出た。
されてはいけないお願いをされて、ちょっと状況の整理が追いつかない。

「えーっと、ちょっと待って。
もしかして、私を抱かせてほしいって言ってる?」

「だからそう言ってるが?」

会って飲むまでは悩み相談だし、セーフだと季実枝はジャッジを下していた。
しかし、寝るとなればそれは、完全に浮気になるのでは?
そこまで親友を裏切る気は季実枝にはない。

「悪いんだけど。
さすがにそれは……」

「季実枝しか頼める人間がいなんだ!」

店内に響き渡るほどの大声で季実枝の言葉を遮り、今度はテーブルにつくほど深く和史が頭を下げる。

「えっ、ちょっとやめてよ……」

集まった視線が痛い。
周囲に曖昧な笑みを配り、声を潜めた。

「聞いてあげたいところだけど、それってもう浮気だよね?」

「うっ」

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