私の嘘と彼女の真実
「六月。
ジューンブライドって憧れだったの」

指を組んだ両手を頭と共に傾け、想像しているのか友子がうっとりとした顔をした。
ジューンブライドが憧れだなんて、いかにも乙女な友子らしい。
そんな友人の願いは叶えてやりたいけれど。

「そう。
あ、その日、私、用事があるんだった。
残念だけど、ごめんね?」

もちろん、これは断るための嘘だ。
友人の晴れ舞台に出席できないのは悲しいが、それをぶち壊すのはもっと申し訳ない。
和史も同意らしく、うん、うんと勢いよく頷いている。
彼もこれがどれだけマズい事態か理解しているらしい。

「えー。
どうしても、ダメ?」

こてっと可愛らしく、友子が首を横に倒して聞いてくる。
和史も期待を込めた目で季実枝を見つめているが、あれは彼女とは反対の意味だろう。
友子のこの攻撃でいつも季実枝は折れていたが、今日はそういうわけにはいかないのだ。

「ええっと……無理」

うるうると瞳を潤ませ、友子が悲しそうに季実枝を見ている。
いつものようにいいよと言いたくなるが、ここは心を鬼にする。

「私、季実枝ちゃんに一番、花嫁姿を見てほしかったな……」

「うっ」

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