私の嘘と彼女の真実
「まあ、なるようにしかならないか」

『そうだな』

とにかく、ボロを出さないように気をつけようと誓い合って電話を切る。
私が和史の元セフレだってもし友子が知ったら、どうするんだろう。
そんな考えが頭を掠めていく。
自分だったらだからなんだと笑い飛ばしてしまいそうだが、友子がどうするのかいくら考えても季実枝には想像できなかった。



その後。
友子と和史はなんの問題もなく結婚した。
ただ、披露宴で和史の友人たちが面白がって、彼には少し前までセフレがいて……などと季実枝のことをほのめかすから、ヒヤッとしたが。

それで季実枝と和史が妻の親友と親友の夫という付き合いをしているかといえば、なぜかふたりでちょくちょく飲んでいる。

「もーさー、聞いてくれよー」

酔っている和史の話を、季実枝はグラスを傾けながら聞いている。
結婚して少し経った頃、和史から友子のことで相談したいから会えないかと言われた。
とても深刻な声だったのでなにかあったのかと、承諾。
しかし、実態は。

「友子は料理がー、恐ろしく下手なんだ」

それは季実枝も知っているだけに、苦笑いしてしまう。
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