私の嘘と彼女の真実
カレーにキュウリが入っていれば、そりゃ怒りたくもなる。
しかし、当の友子といえば。

『えー。
だって、キュウリってズッキーニの友達でしょ?』

などとふわふわうふふと笑われたら気が抜けて、なにも言う気がなくなった。
そんな具合なので和史の苦労しているのだろう。
……などと季実枝は同情したものの。

「まー、あんだけ可愛くて家庭的な顔してるのに、料理下手とか反対にギャップ萌え?っていうか?」

でれっと和史の顔が崩れ、殴ってやろうかと一瞬思った。
その後も、愚痴という名ののろけは続いていく。
ただ単に、友子を知っている知人ということで、話を聞いてほしかっただけのようだ。

それからもたまに呼び出しされては、のろけを聞かされた。
しかしそれは次第に、のろけが消えて完全な愚痴へとなっていく。

「俺、朝は苦手で食事はいらないって言うのに、毎日立派な朝食が並んでるんだ……」

はぁーっと重いため息が、和史の口から落ちていく。

「なに?
友子の手料理だったら朝から食べられるの?」

違うとわかっていながら、それでもからかってみせる。
和史は低血圧気味なのか朝が弱い。
< 8 / 32 >

この作品をシェア

pagetop