私の嘘と彼女の真実
どうにかコーヒーで目を覚まさせて会社に行き、着いた頃に本調子になる感じだ。
季実枝もそれを知ってからは、彼に朝食を準備しなくなった。

「食えるわけねーだろ。
で、食わずに出ようとしたら、じとーっと恨みがましく見てるんだ。
あれなら、怒鳴られたほうがマシだ」

また和史が憂鬱なため息をつく。
それは、季実枝だって勘弁してもらいたい。
しかし。

「ならはっきり、食えないからいらないって言えばいいんじゃない?」

まさかそれでも作るなんて真似はしないだろうと季実枝は思ったが。

「だから。
言ったさ。
それでしばらくはやめるんだが、またすぐに復活するんだ。
もう勘弁してくれ……」

「ああ……」

がっくりと和史の肩が落ちる。
それはさすがに季実枝も同情した。
断っても断っても復活する朝食、しかも食べなくて文句を言われるならまだいいが、黙って見つめているだけとか、なにかの拷問だろうか。

「……なんか友子が、ごめん」

あまりにも和史が可哀想で、つい季実枝の口から謝罪の言葉が出てくる。

「いや。
季実枝が謝ることじゃないし。
それに季実枝に話を聞いてもらってちょっとすっきりした」

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