悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
序章 噂の婚約者と、そのお相手の殿下

ウィルアベル王国内に吉報が報じられたのは、一週間前のことだ。

このたび二十歳の第一王子マティウス・フォン・ウィルアベルが、めでたくもイリスバーグ侯爵家の令嬢ミッシェルと婚約した。

イリスバーグ侯爵は、宰相を勤めるお方である。

その娘は見事な美しい銀髪を持った才女と言われ、国民からも絶大な支持を受けていた。

元々、王太子の相手は、彼女こそ相応しいという声も強かった。

だが、幼い頃から国内の問題の解決にも貢献した彼女は、なかなか表に出てこなかったのである。

それを誰もが惜しんで約十年、電撃的なその婚約は国内を多いに賑わせた。

そしてめでたいことに、弟王子も婚約者といい感じであることが知られ、兄弟揃ってめでたいと国内はお祝いモードだ。

【薔薇君の令嬢】

十八歳の第二王子エリオット・フォン・ウィルアベルの婚約者。

美しい特徴的なチェリーピンクの髪を持った、十五歳の伯爵令嬢アメリア・クラレンスを示す言葉である。

それは、彼女が表に出るようになって見た者達に付けられた名だ。

『クラレンス伯爵家が、その愛らしさと美しさのあまり、家からほとんど出さずに溺愛していた令嬢』

一度見れば、惹き付けられずにはいられない赤薔薇の瞳。

十五歳にしてはやや幼い顔立ちも、持ち前の美しさが妖精のような愛らしさを増させていると社交界で噂が再熱した。

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