悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
直後、クラークが無言でゆっくりとアメリアを見た。

他に何かなかったのかと、彼の零度の目が伝えてくる――気がする。

(ううん、たぶんそう言ってる)

ごめん他に思いつかなかったんです、とアメリアは表情で詫びた。再び紅茶を飲んだミッシェルに密かにほっとする。

「ところでミッシェル様、昨日の王太子妃教育はどうでしたか?」

話をはぐらかすべく質問した。

ティーカップから口を離したミッシェルが、なるほどと頷く。

「まぁ、アメリアも気になるだろうね」

「はい。講師とは相性合いそうでしたか? あっ、世間話とかされました?」

ミッシェルが目を丸くする。

クラークも「は」と口で形を作った。しかし彼は、すぐに吐息を漏らして頭を小さく横に振った。

「そうでした、お前はそういう人間でしたね」

「ははっ、そうだねぇ。アメリアらしいと言えば、らしい質問内容だ」

「え。私、何かおかしなことでも?」

一人だけ置いてけぼりにされたようで、不安になる。

するとミッシェルはあまりにおかしかったのか、笑う口元を手の甲で隠しながら「ごめん」と言った。

「普通ならね、状況を探るようなことを尋ねのではないかな?と思って。ふふっ」

「私、状況を聞きましたよ?」

「講師のこととか?」

こらえきれないと言わんばかりの笑いを含んだ声で、ミッシェルが確認してくる。

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