悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
そんな中でエリオットは、アメリアに会おうとして動いてくれていたのだ。

授業部屋に訪ねていた可能性を思うと、心苦しい。昨日まで第五王子のこと、ミッシェルのことでアメリアの頭はいっぱいだった。

(せっかく好き同士になれた人)

アメリアは、握り合ったままの手へ視線を落としたエリオットに、手を伸ばした。頬にかかった金髪を、指でそっとよける。

「エリオット様、休めてる? 大丈夫?」

「ああ、大丈夫だよ。仕事のことはちゃんと管理している」

だから平気だと言いながら、彼はアメリアの手に頬をすり寄せた。

そのちょっとした仕草が、なぜだか胸にきゅんっとする。

(頬は……この前触った時と同じで、こけていないみたい)

そう分かって安心した。

マティウスの電撃婚約があってから、彼は多忙だった。デートもお預けかと苦笑していた。兄が未来の妻を選んでうれしいのはたしかなようで、今ががんばりどころだと言っていた。

『しばらくすれば落ち着くはずだ。そうしたら、改めてデートに誘ってもいいか?』

デートなんて生まれて初めてで、アメリアは期待を胸に頷いたものだ。

エリオットは、アメリアをとても大切にしてくれている。

彼女が健康を心配しないよう、スケジュールも考えて行っていくからと、わざわざ約束までしてくれた。

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