悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
(よその国から来た第五王子なんて人よりも、私は、彼のことを考えなければならないのに)

十六歳になった時には、結婚式を挙げたい。

それがエリオットの望みだった。だからアメリアは、彼のために王弟妃教育は真剣に取り組んでいた。

「エリオット様のことも考えてはいるのよ。その……できるだけ、もっと会うことも考えるわね」

「ありがとう。そうしてくれると嬉しい。アメリアは魅力的だから、目を離しているのも少し心配になるんだ」

自然な笑みで、そんなことをさらりと言ってのけるなんてずるい。

言いながら頬を撫で返されて、かぁっと体温が上がる。アメリアの胸の鼓動は一気に速まった。

(私に魅力を感じる人なんて、エリオット様だけよ)

そんな無駄口も、彼の目が少し細められた直後できなくなった。

「ところで、何か困ったことはないか?」

「えっ。いえ、何も」

反射的に否定した。

咄嗟に浮かんだのは、隣国の第五王子ルカだ。けれどあれくらい、一人で対処できないと彼の婚約者としてはだめだろう。

忙しいエリオットに、手間をかけてはいけない。

アメリアはそう思った。ちょっと付きまとわれている程度なので、彼自身を引っ張り出さなければならない問題ではなかった。

「――ふうん、そうか。何もないか」

含むような声で彼が言う。

手を握る力がきゅっと強くなって、ドキッとした。

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