悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
キスで再び口を塞いだ彼が、腰のくびれから胸元を何度も手でなぞる。

(この人はっ、こういうところがあるから!)

アメリアは、もう真っ赤だった。

彼の口の中に非難の言葉をもらしながら抵抗するものの、手を頭上に押し付けられて、本格的に危機感を覚えた。

「さてアメリア、数日分のたまりにたまった俺の愛、受け止めてくれるよな?」

見下ろしたエリオットが、艶っぽい吐息を吐き出す。

ゲームの中で、一番〝盛んな〟メインヒーロー。彼に両手を頭の上で拘束されているアメリアは、胸を大きく上下させながら思う。

(――無理)

婚約にしては、アウトなことをさせられる気がする。

「ま、待って、休憩だってもう数十分もないから」

「それくらいあれば十分だ」

「何をすることに!?」

エリオットの目に燃えるような熱を見て、不意にのしかかられている状況に恐怖を覚えた。

(――怖い)

どんな強がっていても、この世界のアメリアはまだ十六歳前だ。

心構えなんてできていないから、この先に進む、と考えた途端に指先から全身まで強張った。

「ご、ごめんなさいエリオット様っ」

いちおう詫びつつも、力いっぱい手を振り払った。

だがソファから逃げ出そうとした直後、後ろから抱き締められて、身が固まる。

「すまない、大丈夫だ。だから逃げないでくれ」

耳元で、焦ったような彼の声が聞こえた。

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