悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
四章 騒がしい再会
アメリアは、本日も迎えにきた馬車に乗り込んだ。登城のため向かう道中も、昨日のことが少し気になった。
(エリオット様、余裕がなかったみたいなのよね……)
思い当たること言えば、ルカだ。
ヴァレンティーナほどの対応力がないから、心配をかけてしまっているのかもしれない。パーティーで力不足は実感している。
「……私が、もう少しバチッと決めて断れればいいだけの話なのよね」
王族にどう対処すればいいのか手探りでがんばっているが、ルカがめげる感じがないのも困ったものだ。
先日も、貴族サロンでの推し活にずっと付き合っていた。
「うーん。無視するのも効果がなさそう……」
忙しいから、という理由で退けられない手強さがある。推し活をよく分かっていないのにずっと同行されたのは、少し驚きもした。
(あ。でも、少しは懲りた可能性もあるかも?)
ももんんとした悩みが期待へ転じた時、ようやく王宮へ到着した。
停車してすぐ、馬車の扉がノックされた。
窓から見えたのは、クラークの顔だ。いつもなら勝手に開けるので、嫌な予感が込み上げた。
まるで『心の準備はいいですか』という間を与えられている気がする。
(まさか……)
アメリアの表情がじわじわと変わったタイミングで、よし言わんばかりにクラークが扉を上げた。
「ひぇ」
次の瞬間、ルカがそばから顔を見せてきてギョッとした。