悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
アメリアは授業の教室まで大回りをして、クラークと推し話を楽しみながら見守れる場所をチェックする予定ではいた。

ミッシェルを眺められる至福の時間を想像しながらの観察ポイントのチェックは、大変有意義で貴重な時間である。

ルカがいるとやりづらい。邪魔だ。

何より、エリオットの気掛かりになるのはだめだ。

(私はエリオットと婚約中だし、何をどう心配する要素があるのか分からないけど、でも彼の元気がなくなるのは、だめ)

クラークに対応を相談したいが、今の状況では無理だ。

ここは、アメリアが自分でどうにかしなくてはならない。ぐるぐる悩みながらルカに向き合う。

「……あ、の。大変申し訳ございませんが、本日はそのようなことは」

王族に嘘を吐いても大丈夫なのか?

そんな緊張感に、ひゅっと喉が強張った時だった。

「アメリア」

落ち着くしっとりとした声が聞こえて、胸のざわめきが一瞬で凪ぐ。

(――あっ、エリオット様)

つられるまま顔を上げて、驚く。

王宮の建物前の階段を、軍服仕様の衣装を着た彼が下さってくる。これから会議に出席する予定があるのか、マントも着けていた。

「少し話そうと思ってクラークも迎えに寄越したが、何かあったか?」

そういう設定にするらしい。

彼が現われたことには驚いたが、助け船を有難く思った。人がいる前での言葉遣いを意識し、淑女の姿勢で微笑み返す。

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