悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「はいっ。怖い感じの人だったら、愚痴を聞いてあげようと思って!」

アメリアは、にこーっとした。

役に立てるところだ。相手が友達なら、ミッシェルだって気構えをせずに話せるだろう。

しかし直後、隣から珍しい感じの笑いが聞こえた。

「――ぷっ」

一瞬、なんなのかすぐには頭で結びつかなかった。目を向けてみると、クラークが向こうを向いている。

「……え、もしかして笑ったんですか? クラーク様が笑うとか、貴重じゃないですか!?」

「肩を掴んで揺らすんじゃありません」

首の後ろまで見せた彼の背は、気のせいではなく揺れている。

「えぇっ、だって見たい! こっち向いて!」

アメリアは半ば腰を上げ、クラークの肩を掴んでがんばった。しかし憎たらしいことに、無駄に鍛えられた彼はびくともしない。

「アメリアのその気持ち、よく分かるなぁ」

ミッシェルの方向からは、よく見えるようだ。彼女もつられたようにくすくす笑っていた。

(え。いったいどんな表情がそこにあるというの!?)

アメリアはとても気になった。

だが、クラークをうんともすんとも振り向かせられない。苦戦の挙句ぷるぷるして立ち尽くしていると、ミッシェルが言ってくる。

「ところで、アメリアは来週からだね。昨日の講師も担当すると言っていたよ」

「あ、そうなんですか?」

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