悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
だがクラークがすぐそこに立ってしまい、見えなくなる。ひとまずルカについてこられるのを回避できたことは安心した。

「……ありがとう、エリオット様。公務のはずなのに」

「気にするな。当然のことをしたまでだ。アメリアは俺の婚約者だ」

肩を抱く手に優しく力が込められて、ルカに別れも告げられなかったことへの後ろめたさはすぐに解けた。

(あ、そうか。私が婚約者だから)

大切にしてくれているのだ。そう分かって、胸がじわじわ熱くなる。

彼のたくましい腕の中にいると、とても安心できた。

「お前は、安心してそこにいるといいですよ」

後ろから、個人的な独り言のようにクラークの声がした。

肩越しに目を向けると、彼はよそへ顔を向けている。以前『困っているのなら友人として』と言っていた通り、彼も気にしてくれていたのか。

「ありがとう、クラーク様」

微笑みかけたが、彼は何も答えなかった。

ただ、その口元は珍しく少しだけ笑っていた。

「クラークを付けていれば心配事などない。彼は王族への対応も把握している」

「そうなのね」

それなら、だめな時は先程のように先に止めてくれるのだろう。

そんなことを考えていると、エリオットにひょいと顔を覗き込まれた。

「俺に無理をさせていないか、心配してる?」

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