悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
貿易でも重要なその友好国の王太子夫妻の来国については、王太子マティウスが任された。警備と護衛は、第二王子であるエリオットが受け持つ。

王子兄弟にとっては、婚約後の一番大きな仕事ともいえる。

(まぁ、予定としてはもうしばらく先だけれど)

父から同席することになるだろうと聞かされた晩餐会の目処は、秋の狩猟祭に合わせて、とのことだ。

その王太子は、こちらでの狩猟をいつも楽しみにしているのだとか。

「ふうん。それが当日見られる範囲ってことか? というか、その図面ってアメリア嬢が描いたのか? うまいな」

「クラーク様作ですわ」

アメリアが得意げに答えると、ルカが疑問でいっぱいの顔をした。

「……まぁ、いいか。そもそもさ、ミッシェル侯爵令嬢は国一の才女で完璧な令嬢だろ? 加勢とか何も必要ないと思うけどなぁ。一人でなんでもこなせるって、放っといても大丈夫だろうに」

わざわざなんでと、ルカが呆れたように続けている。

アメリアは『放っとけ』という言葉に、ざわっとした。

「一人で大丈夫な人なんていないわ。強い人だから大丈夫、だなんて、結果しか見ていないからそう言えるのよ」

つい普段の言葉で、彼の話を遮った。

いつでも静かに微笑んでいたミッシェル。彼女は、誰にも言えない〝秘密〟と願いを抱え続けていた。

何年も、十何年もだ。

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