悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
誰にも言われなかったから、銀髪が美しいとも自覚をしていなかった。諦め、自信がないからと声を潜め、独りでいることを選んだ。

彼女が踏み出した一歩は、彼女の世界が変わるほどに勇気がいる一歩だった。

それを、アメリアはクラークと一緒にこの目で見たのだ。

「震えていたミッシェル様も知らないからっ。これまでのミッシェル様の迷いも努力も知らないのに、勝手なことを言わないで!」

「ご、ごめん! 軽いジョークだったというか。そこまで怒らせるとは思わなかった」

ルカが慌ててアメリアの前に回り込み、両手を振って謝った。

「ええと、ほんと、思慮に欠けていて申し訳なかった」

彼は、ミッシェルのことを知らない外の国の人だ。

アメリアは、彼なりに反省して詫びているのだと感じ、冷静になった。

「いえ、こちらこそ急にごめんなさい……」

カッとなってしまったことを自覚し、アメリアも謝った。気を鎮めたのを見て、ルカが胸に手をあててほっとした。

――カチン、と鋼鉄な音がした。

ルカが俊敏に反応して、勢いよくクラークの方を見た。

「な、なんだ。この護衛、今抜刀しかけてなかったか?」

アメリアは気付く速さに驚く。

「そんなことはあませんが」

「涼しい顔でさらりと嘘を吐くなよっ」

「では、彼女の前ではあまり品のないことは言わないようお気を付けください」

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