悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
王弟妃教育のことだ。つられて目を戻したアメリアは、ミッシェルに笑顔で着席を促されて意識せずすとんと腰を下ろす。

それを見たミッシェルが、また肩を小さく揺らして笑った。

「ふふふ、アメリアは可愛いなぁ。素直だね」

「ただ単純なだけです」

クラークが眼鏡を押し上げつつ、座り直す。小さな声で「羨ましい」と聞こえた際、アメリアはちょっとゾッとした。

(よく分からないけど、羨ましがられている……)

こちらとしては、クラークの表情が見られたミッシェルが羨ましい。

彼が噴き出すなんて、大変貴重だ。どんな風に笑っていたんだろうと想像していると、ミッシェルが喉を潤すべくティーカップを持ち上げた。

「その『講師になった人』だけれど、とてもユーモアがあって、元気なお方だよ。アメリアのこと、すぐ好きになると思うな」

どんな人なんだろう?

アメリアは尋ね返しもせず、きらきらとした目で想像する。

(ミッシェル様がそう言うのだから、絶対にいい人!)

初めましての講師陣に不安もあったアメリアは、その一つが解消されて、初日を迎える日が楽しみになる。

「なるほど。つまるところ、彼女の意外性も受け入れられるタイプの貴族、というわけですね」

「何を納得しているんですか、クラーク様」

「いえ、ミッシェル様に絶対の信頼を置いているお前のことは、評価しています」

「ありがとうございます!」

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