悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
上機嫌なアメリアが、真に受けてにこにこーっとして答えた。その途端にミッシェルが再び噴き出し、クラークも顔を横に向け、口元に軽く握った手を添えて「ぷっ」とやった。

「えぇぇっ、またクラーク様が噴き出した!」

また笑いを含んだ声が飛び交い、場の会話は途切れない。

少し離れた位置で待つミッシェル付きの侯爵家のメイド達も、口元が微笑んでしまっていた。

ミッシェルの婚約が決まってからは、三人の集まりは、互いの妃教育の予定などの情報交換の場にもなっている。

おかげで、マティウスとは順調そうだとも知れて安心していた。

先日は晩餐会へ出席する前に、お忍びで王都を散策デートしたようだ。

「でもミッシェル様は、婚約者となった日からずっと、家に帰る時間がお父様と同じなんですよね? 休日もマティウス王太子殿下と視察に回られて」

紅茶で一息吐いたアメリアは、今日まで聞いた話を思い返す。

正直、それを目撃した都民うらやましい――ではなくて、休日もあってないようなもので大変だ。

「クラーク様からも、二人の時間はしばらくはあまり持てないとも聞きました。お忙しくて、少し心配になるというか」

「これくらい忙しいに入らないよ」

答えたミッシェルが、ふとスカートに目を落とす。そこに両手を添え、かぁっと頬が染まった。

「その……毎日、マティウス殿下と会えるのが、私にとってご褒美というか」

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