悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
同じくミッシェルファンであるヴァレンティーナが、それとなく菓子の皿へと視線を移させた。

結婚式は、来週に参加者を限定してソフィアがいる教会で小さく行うらしい。

庶民籍から貴族籍への結婚だ。すでに婚姻の書類は受理され、二人は問題なく戸籍上は夫婦になったのだとか。

「僕としても、結婚式を挙げてから『夫です』と名乗りたいな、と思っていて……」

「私も、ヒューゴさんの家の事情に合わせたいと思いまして」

ほぼ同時に、二人が恥ずかしそうに頬を染める。

なんて初々しい。

二人の左手にあるのは、結婚式まで用だという婚約指輪だ。

それは一族の伝統的な求婚の贈り物だった。エリオットといった周りの貴族たちが協力し、ヒューゴの実家である子爵家を納得させたおかげだ。

(エリオット様、ミッシェル様のことで協力しながらも、ヒューゴ様たちのことでもがんばってくれていたのね)

アメリアは、尊敬心が増して胸が熱くなるのを感じた。

なんと言っても、ゲームヒロインの幸せすぎる様子がすごく可愛い。

今の彼女を見ていると〝刺激的な恋愛〟より、〝ふわふわハッピーエンド〟を迎えた理由が分かった気がした。

(――ここはゲームの世界ではなくて、私にも、彼女にとっても現実)

辿る道筋が違えば。出会いや出来事によって、その時々に抱く考えが微妙に違っていけば――当たり前のように変わっていくのだろう。

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