悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
なんっっって、尊い。

アメリアは、ティーカップを取り損ねて倒しそうになった。隣でパーンッと小さな音がして、びくっと肩がはねる。

(またクラーク様眼鏡割ったの? あっぶな!)

しかし、今は、目の前から視線をそらせない。

両想いになってますます乙女チックになった〝高貴なる令嬢〟が、鼻血を誘発させんばかりの威力で、高貴すぎて、尊い。

この様子をもうしばらく楽しむためには、もう色々とこらえるしかない。

クラークには、ミッシェルにバレないうちに懐から眼鏡のスペアを取り出して、速やかに交換していただきたい。

(ああああああ恋する乙女な推しがっ、尊い! 鼻血出そう!)

今、鼻血を出すわけにはいかない。

必死にメンタルで耐える。テーブルをぎゅぅっと手で握るアメリアの横では、眼鏡を変えつつクラークがとうとう顔を伏せて震えている。

じゅうぶんな時間を置いた頃、メイド達が、現われた騎士に気付いて動き出した。

「ミッシェルお嬢様、そろそろお時間です」

「ああ、今行こう」

頬の熱をごまかすようにミッシェルが立ち上がる。

(恥ずかしいんだろうなぁ。ミッシェル様こそほんと可愛いっ)

アメリアは、密かにくふくふと思ってしまう。

無表情だけれど、クラークも絶対にそう思っているはずだ。なんといったって、アメリアがこの世界で出会えた最高の〝同志〟なのだ。

「それじゃ、またね」

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