悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
(くれといわれても、くれてやるものか)

あの時、ルカから厭味ったらしく言われた言葉を思い出して、またしても怒りを覚えた。

(まさか、本気でアメリアを欲しているのか?)

ルカはこれまで来国経験がない。

しかしアメリアの美しさを思えば、大国の王族という性質上、欲しいものなら奪いたいと出る懸念が浮かんでいた。

「それで? きちんと動向も把握したうえでの報告なんだろうな?」

一緒にいたのが目撃された、という話を聞いただけなのなら問題だ。

エリオットから厳しい目を向けられた二人は、すぐ『もちろんです』と答える代わりに頷く。

「あのあと、令嬢グループが迎えに寄越され、ルカ殿下は共にヴァレンティーナ公爵令嬢の元へ行ったそうです」

「あの、例の特別サロンです」

バイザーが、無表情のまま『あの』と強調する。

一瞬、エリオットは言葉が詰まってしまった。

「アメリアが招待に応じたのはまだ分かるが……第五王子、意外と勇者だな」

「知らなかったのでしょう。ルカ殿下がついていくのを俺の部下が見届けたのち、特別サロンの扉前の兵と共に絶叫を聞いております」

「それなのに出なかったのか?」

二人の部下は真顔のまま頷く。

エリオットは甚だ疑問だった。情けなく悲鳴を上げておきながら、なぜルカはそこにとどまったのか。

(それほどまでにアメリアといたかったのか?)

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