悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
よく見て驚いた。それは兄のロバートだった。片手には仕事の用で運んでいたのか、書類が入ったような荷物を抱えている。

「え、え? お兄様――」

「おい聞いてんのか紫髪、テメー誰だ、アメリアのなんだ? もしかしてストーカー野郎か? だったらちぎって池の魚の餌にすんぞマジで」

「お兄様ああああああぁぁ!?」

こんな怖い口調、聞いたことがない。

いちおう相手は王子である。あまりの痛みに声も出ないルカに気付き、慌てて止めに入った。

「お兄様っ、手をお放しくださいっ」

「アメリアを困らせるクソ野郎は抹殺する」

「抹殺!?」

クソ野郎、なんて大変下品な言葉にも驚く。

「俺殺されんの!?」

ルカが情けない叫び声を上げた。

場は大変混乱していた。クラークは興味もなさそうに「うわー」と棒読みの声を上げて、三人の騒ぐ様子を傍観している。

「というか、こ、この人、アメリア嬢のお兄様だったのか――ひぃ!?」

掴んだ頭ごと無理やりロバートの方へ向かされ、顔を突き合わされたルカが息を呑む。

「テメーに兄呼ばわりされる覚えはねぇよ」

兄は、虫けらを見るような目をしていた。

「すみませんでしたああああああ!」

ルカが反射的に謝る。

なんて目で見下ろすんだと、アメリアも兄の気迫に慄いた。

「お、お兄様聞いてくださいまし。実は、違うんです」

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