悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
ストーカーが誤解であることを、まずは解こう。

アメリアは慎重に、どうにかこうにか言葉をまとめて説明する。

ルカは、留学中のバゼリリアン王国の第五王子だ。ロバートが彼を殴りでもしたら大問題である。

兄が人を殴るなんてイメージにはなかったが、今の彼を見ているとその想像が拭えず、とにかく早口で「案内中なのっ」とも誤魔化した。

「――ああ、彼が滞在中の」

ロバートが、ようやく手を放す。

理解したらしいが、まとっている空気は冷たい。クラークが感心したような目で眺めている中、いちおう、という感じでにこっと作り笑いをルカに向けた。

「婚約中のアメリアに迫って困らせているのかと思ったが、どうやら〝俺〟の勘違いだったみたいだ。すまないね、うちのアメリアは少し前まであまり外に行かなかったものだから、つい過保護になっていてな」

「ま、まさかぁ……ははは、は……」

ルカが、冷や汗だらだらで兄から目をそらす。

(ん?)

アメリアは、ほっとしたところでハタと思う。

「お兄様、今『俺』って言――」

「お疲れアメリア。急でびっくりさせて、ごめん」

苦笑と共に頭に手を置かれた一瞬、アメリアは質問内容が頭から飛んだ。

(――大きな、手だわ)

エリオットとは違う遠慮のない力加減を、アメリアは〝よく知っている〟と思わされた。それは前世の記憶だ。

でもいつ? どこで?

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