悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
恐々とロバートを見送ったルカが、詰めていた息を大きく吐き出した。

「いえ、髪と目の色はそっくりですよ」

「色のことは言ってないわ! お前も、あの鬼みたいな気迫見ただろ!? 魔人か!?」

「手近でたとえるなら、後輩騎士を容赦なく池に投げ捨てる鬼指導官ですね」

「それお前のことだろ!」

なんかもう、色々と収拾がつかない。

妹本人の前で、勝手な想像から色々と感想を飛び交わせるなんて失礼だ。

「言っておきますけど、私のお兄様は社交的で、物腰柔らかなお人ですわ」

普段はそうだ。

妹関係になると熱くなることは知っていたが、先程の凄み方はアメリアも初めて見たので言葉は続かない。

ロバートは騎士学校で寮生として数ヵ月、他の令息らと義務課程の訓練を受けていたことだってあった。仲間内では、ああやって怒ったり叱ったりできる人なのかもしれない。

「こ、こわ……俺はあんな人とまた対峙しなくちゃならんのか……」

ルカが、ぶるっとして自分を抱き締めた。

「『また』?」

アメリアは顔を顰めた。そもそも、好きな兄のことを怖いだの言われ続けるのは気分が悪い。

「ルカ様には関係ないでしょう。お兄様と会う機会なんてありませんし」

「いや、婚約することになったら必要だろ! そしてら俺にとって義兄になるわけだし、アメリア嬢と婚約できれば利があるし……!」

「は……?」

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