悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
がばりと目を向けてきたルカを前に、アメリアは思考が停止する。

(……この人、今なんて言った?)

聞き間違いでなければ、たしかに『婚約』と言った。

咄嗟に胸の言葉を出してしまったようで、目が合ったルカも口を「あ」の形に開けている。

(私と……婚約? 私にはエリオット様がいるのに?)

まさか、本当に恋心?

先日、ヴァレンティーナが冗談交じりで口にしていたのを思い出す。

(いいえ、そんなはずない)

やはり考えても、恋云々とは思えなかった。エリオットの気持ちがアメリアに向いているなんて思ってもいなかった頃、どうしようもなく落ち着かなくなったあの強い眼差しとは違う。

するとルカが、意を決したような顔で歩み寄る。

「なぁ、アメリア嬢。エリオット殿下はやめて、俺にしないか?」

クラークが「おや」と他人事な声をもらした。

偶然にも耳にしてしまった通りすがりの兵たちが、どうにか目は向けなかったが思いっきり咳き込んでいた。

対するアメリアは、ときめきどころかマイナスポイントを顔に出していた。

「……バカにしてます?」

もう色々と呆気に取られてしまい、思わず口から出たのはその一言だった。



◆§◆§◆



週末の休日は、もやもやして何も楽しむことができなかった。

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