悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
「ここに残す交換条件としては、俺への労働の提供だ。俺や兄上、陛下を助けてくれるというのなら、守ってやろう」

「やったぜ! 俺ここの空気とか好きなんだよね、永住したいくらい」

「永住できるか、ひとまずは最長の留学だ。その前に、兄弟争いの件をどうにかしないとな」

「早速考えてくれてんの? さっすが参謀的王子」

エリオットの目が、殺気を宿してルカをゆっくり見据える。

空気を読んだハワード騎士団長が、素早く後ろからルカの両脇に腕を回して、ずるずると引きずった。目で追うクラークの近くまで引き離された彼自身は、きょとんとした顔だ。

「今度『参謀』やらと呼びやがったら、沈める」

「あ、了解。ごめん口が滑った」

ようやく察したのか、ルカが謝った。

思ったことを、口からどんどん出すタイプみたいだ。

なんだかんだで丸く収まっちゃったなと、アメリアは一変して軽くなった心境で思った。

でも、これで良かったと思う。

本音で語った彼の話を聞いていると、憎めないなと感じてしまった。そして今回の判断を下したエリオットのことを、ますます好きになった。

(ここにいる方がルカ様にとっていいと、彼も思ったんだわ)

きっと、そう。

迷惑がっても相手が本当の悪人でないのなら、無情にはなれない人。

「きっちり労働は提供するからさ!」

今回、迷惑をかけにかくまくった当隣国の第五王子、ルカが満面の笑みで王子らしくない台詞を言い放った。



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