悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
王族と血縁関係にあるという立場上、ヴァレンティーナの縁談は彼女の意思で行われない。政治的な結びつきのため、他国に嫁ぐ可能性もある。

アメリアは一瞬、掛ける言葉に迷う。

その表情を見て考えを察したのか、彼女は勝気に唇を引き上げた。

「陛下たちが厳選してくださるんですもの。きっと、いいお相手よ」

信頼した彼女のその笑った顔を、アメリアはとても美しいと思った。

考え方の根本だけでなく、覚悟の違いを思い知った気がした。

この世界で生き続けていたら、自分もいつかエリオットの立派な妻として、彼女みたいな気高い貴族女性になれるだろうか。

「エリオット殿下もバゼリリアン王国に貸しを作って、ますますいい社交手段を得たわよね」

「私もそう思うます」

彼女が話を変えたので、アメリアも明るい調子で付き合った。

別れる時に、辛気臭い空気は残したくなかった。『また今度』と言って、笑って次の約束をしたい。

「まっ、それでもエリオット殿下は〝王〟は望まないでしょうけれど。ほんと、お兄さん大好きっ子ですわよね」

それだけの実力を持っていると認められ、支持も集めているのだろう。

兄が大好き、という点では納得できて二人で笑い合った。

とても穏やかな時間が流れているのを感じた。同じくミッシェルのファン――それがこんな風に話せることになるなんて、出会った当初は思ってもいなかった。

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