悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
(とにかく切れさせないことが大事、よね……)

この状態でムキムキをけしかけられたら、トラウマになりそうだ。

「ふふん、仕上がりを見て驚きました? 後宮で来客があるから、女性だけの場に入れるようにしてみましたの」

「その作戦は根本から失敗していますね」

「根本って何よ!?」

アメリアは風のごとく走り寄り、クラークの腕を捕まえた。

「それではヴァレンティーナ様っ、ごきげんよう! またこんど!」

配慮も知らない冷徹近衛騎士隊長を引っ張り、特別サロンから逃げた。



少し前までは人の慌ただしい行き来も見られた通路は、すっかり通常の光景に戻っていた。

高官たちも肩の力を抜き、同僚らと談笑しながらゆっくり歩いていく。

「本当に昨日で全部終わったんだなぁ、と感じますね」

すれ違いざま、アメリアは彼らを目で追い駆けた。

「これまで友愛は深めてこなかった大国ですから。私としては、ようやくミッシェル様と言葉が交わせるのがうれしいです」

「私もです!」

あと一時間もしないうちの予定を思い、アメリアも満面の笑みになる。

ルカの件が落ち着くまで、あとで話の辻褄が合わなくなってしまうことを避けるために制限していた。

これで安心して会える。

近くから顔を見られるのもうれしいし、お喋りも楽しみだ。何より、アメリアは昨日でようやくとある心配事からも解放された。

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