悪役令嬢ですが推し事に忙しいので溺愛はご遠慮ください!~俺様王子と婚約破棄したいわたしの奮闘記~2
ああ見えて、兄のロバートは仕事の手際が良い。以前いた部署でもかなり重宝されていた。

(二十分を取るのに、ようやくだったのね)

それなら正直に忙しいと言えばいいのにと思う。けれど、アメリアのためにそう言わない優しさに胸が熱くなった。

いつものように、ソファに並んで腰かける。

身体を向けたことによって、互いの足が触れ合った。それでも足りないと言わんばかりに、彼は包み込んだアメリアと手を重ねたままでいた。

短い休憩だ。

彼は連日、昼休憩も惜しむほどに時間に追われていたと聞く。

マティウスをサポートするための公務に加え、今回のバゼリリアン王国の第五王子という余計な仕事を挟んだことで、軍部側の通常業務も少し溜まってしまっている状況であるらしい。

今日も、これから彼が持つ部隊と外部部隊とで何かあるようだ。

「エリオット様、本当にお疲れ様」

「そう、直にアメリアから言葉を聞きたくてたまらなかったんだ」

見つめる彼の目が、優しく細められる。

昨日の帰りに、クラークに持ちせた返事にも書いた。でもアメリアも、直接エリオットに言いたくてたまらないでいた。

あんなにうっとおしがっていたルカとの約束を、彼がこんなにも早く果たしたことにも尊敬の念を抱いている。

「体調は問題ない? 軍部でも忙しかったと聞いたわ」

「俺は体力だけは兄上よりも自信がある。平気だ」

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